【植物物語】
私の家の隣に住む華さんは、植物が大変に好きである。
寝ぼけ眼を擦り朝の冷え込みに肩を震わせながら新聞を取りに外に出ると、大抵いつも庭で草木の手入れをしている華さんを見る事ができる。子を産む事もなく流行り病で旦那に先立たれた華さんの肢体は三十を前にしても十分に若々しく、遠めに見てもなんとも蠱惑的であり艶めかしい。
「おはようございます、山田さん」
しなびた茄子そっくりなうちの女房と取り替えることは出来まいかと考えていると、垣根越しに声をかけられる。やぁ、と私も挨拶を返した。
「見て頂きたい花があるのですけれど、お時間は大丈夫でしょうか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。アレは休みとなると昼まで寝ているので」
家を指差しながら笑うと「ではこちらに」と手招きをされたので、垣根を飛び越えるわけにもいかず表に回る。好き放題に荒れている我が家と違い、美しく剪定された植木の枝ぶりに感心しながら庭を進んだ。
冬に咲く花といえば、何があっただろうか。
私はあまり植物に詳しくはない。これを機会に華さんに色々と習ってみるのもいいだろう。いや、決して下心があるわけではないのだが。
「山田さん、こちらですよ」
「庭ではないのですか?」
誰もいない庭できょろきょろと視線を走らせていた私を障子の向こうから華さんの声が誘導する。すでに花を摘んで生け花にでもしているのだろうか。履いていた靴を脱いで縁側に立つと、部屋の中で何かが擦れるような小さな音が聞こえてきた。
「華さん?」
「どうぞ、入ってください。静かにですよ」
首を傾げながらそっと障子の縁に指をかける。それほどまでに珍しい花なのか――
「……ああ、華さん」
消え入るような声が私の喉から漏れた。
畳の上には、華さんが足を崩して座っている。傍には乱雑に置かれた衣服があり、持ち主の細く柔らかな線を冷たい空気の下に晒していた。白く瑞々しい肌はうっすらと赤く上気し、劣情に潤んだ瞳が私を見上げてくる。
「なぜ私が毎朝庭に出ていたかお分かりですか? あなたに、会えるからなのですよ」
すると、見せたい花とは。
たまらず私は華さんの肩を掴み畳の上へ組み伏せ、その胸元にたたえられた二つの白桃に手のひらを伸ば(文章が省略されました)
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ネトゲ友達に「植物物語ってタイトルで植物の話を書きなさい」って言われたので書いてみせた時の話。
なんかもうだだすべり。